排水トラップの封水とは?封水切れを起こす原因と防止対策方法をプロが解説
最終更新日 2022年7月30日
「水回りを清潔にしているはずなのになぜか臭い」「排水管からの嫌な臭いがなかなか消えない」など、水回りのトラブルの代表格ともいえる「ニオイ問題」に悩まされる方は多いです。
これらの多くは、排水トラップの封水切れによる場合がほとんどです。
ここでは、水回りの重要な役割を担う排水トラップの封水と、封水切れの原因と対処方法について詳しく解説していきます。
水回りの臭い対策の仕組みである排水トラップの封水(ふうすい)とは?
洗面台の下やトイレの排水パイプに、S字やU字に折れ曲がった配管が取り付けられているのを見たことはありませんか?
これらは、「排水トラップ」と呼ばれるもので、建築基準法で設置が義務付けられている設備です。
排水トラップは設備の排水経路の途中に設けられており、湾曲した部分にあえて水を溜めることで、下水道から逆流してくる悪臭や、硫化水素などのガス、害虫やネズミなどの侵入を防ぐ役割を果たしています。
排水パイプの湾曲した部分に溜まっている水のことを「封水」と呼びます。
排水トラップにはさまざまな種類がある
排水トラップには、非常に多くの種類があります。
一般的に普及している形状としては、S字型トラップやU字型トラップ、P字型トラップがあります。
キッチンのシンク下や洗面台の下の排水パイプでこれらの形状を目にしたことがある人は多いはずです。
このほかにも、ドラム型トラップやお椀形状のベル型トラップなど、様々な構造の排水トラップがあります。
どの構造も封水の技術が使われており、排水管の中に水の層を設けることでニオイや害虫を遮断しています。
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つまり、臭いを止める役割の封水が無くなると悪臭が家に入ってくる!
封水の役割を担う水は、放っておけば時間の経過とともに蒸発していきます。
普段使っている分には新しい水が流入するので蒸発量は微々たるものですが、旅行に出かけて長期間水道を使わないときや、夏場など温度の高い時期などは蒸発量が増え、封水の役割を果たせなくなることがあります。
このことを「破封」や「封水切れ」と呼びます。
排水パイプ内が封水切れを起こすと、パイプ内に隙間ができます。
その隙間から、嫌な臭いが逆流して家の中に入ってくるというわけです。
虫も入ってくることがある!
封水切れを起こすとパイプ内に隙間ができるため、臭いだけでなく小さな虫が入ってくることもあります。
長期間家を空けて、帰ってきたら水回りに虫が湧いていたというケースも少なくありません。
このように排水トラップの封水は、水回りの衛生面を保つ重要な役割を担っているのです。
封水切れ(破水)を起こす主な4つの原因と対策方法
封水切れを起こす原因はいくつかあります。
ここでは、封水切れを起こす原因の代表的な4つのケースとそれぞれの対処方法について紹介します。
【原因1】封水の蒸発
封水切れを起こす原因その1は、「封水の蒸発」です。
封水の役割を果たしている水は、放っておけば自然と気化していき、徐々に封水の水位が下がっていきます。
普段使用している分には蒸発する量は少ないとされていますが、長期間旅行や出張などで家を空けて水道を使わないときや、夏場など気温が高い時期には封水切れを起こしやすいとされています。
1週間から10日程度であれば、封水切れを起こすことは少ないですが、それ以上家を空ける場合には注意しておく必要があります。
また、普段家にいても水回りを使わない場合は封水の水位が下がることもあります。
「普段から家にいるのに洗面台から嫌な臭いがする」という方の中には、洗面台を使わずにキッチンで洗顔や歯磨きを済ませているといったケースもあります。
このようなケースは、定期的に水を流すことで解消することがほとんどです。
長期間家を空ける時などは、水を流して封水の水位を十分にしておくことで封水切れを防ぐことができます。
マンションなどに住んでいる場合は管理会社に巡回してもらい、定期的に水を流して封水の補充をお願いするという方法もあります。
【原因2】排水トラップの髪の毛や汚れ
封水切れを起こす原因の2つ目は、「排水トラップ内の汚れ」によるものです。
排水トラップ内に髪の毛などの繊維状のゴミが堆積すると、封水がそれらを伝って下流へ流し出されてしまうことがあります。
これを「毛細管現象」と言います。
特に洗面台や浴室で嫌なニオイが起こりやすい原因の1つです。
また、配管内にゴミが堆積すると水の流れも悪化します。
堆積したゴミが水路を邪魔して、うまく封水が元の水位まで戻らずに空気の通り道ができてしまうこともあります。
これらの対策は、排水口に髪の毛などのゴミを入らないようにしておくことである程度は解消できます。
排水口のゴミ受けやヘアストッパーなど、ホームセンターや100円ショップなどで購入できますので、それらを排水口にセットしておくことでゴミの流出をある程度抑えることができます。
もちろん全てのゴミの流出を防ぐことは難しいため、定期的に掃除を行うことも大切です。
入り口付近は歯磨ブラシなどを使って磨き、排水管内は排水管洗浄液などで堆積したゴミを溶かすなどの手入れを行うようにしましょう。
それでも解消できない場合は、頑固な汚れと化している可能性がありますので、水道清掃業者などにお願いすると良いでしょう。
【原因3】誘引現象
誘引現象は、主に2階建以上の住宅やマンションなどの集合住宅で起こりやすいトラブルの一つです。
上層から大量の水を排水管へ流すと、排水管内の気圧が一時的に下がり、封水が排水方向へと引っ張られて流れ出してしまうことがあります。
配管内の気圧の乱れから封水を引き抜いてしまうことから、このことを「誘引現象」と呼びます。
いくら自宅の排水口をきれいにしていたとしても、外発的な要因によるトラブルですので、自分に非がなくとも起こりうる可能性のあるものです。
誘引現象の対処方法は、排水管内の空気圧を安定させることがもっとも効果的です。
通気管付きの排水管を設置することで解消できますが、DIYでの取り付けは難しいため、専門業者へお願いするのが最も良い方法です。
集合住宅や共同設備の場合は、管理会社へ相談して対処してもらうようにしましょう。
工事が終わるまでは、少し手間ですが、こまめに水を流して人為的に封水切れを防ぐような対応が必要です。
【原因4】補助水管などの水道設備の不具合
4つ目の原因は、補助水菅などの水道設備の不具合です。
例えばトイレの場合、トイレを流した後に封水は元の水位まで戻ります。
これは補助水管の働きによるものです。
この補助水管が何らかの原因で外れてしまったりすれば、封水も溜まらなくなります。
タンク内を掃除しているときなど、何かの拍子に補助水管が外れてしまうということもありますので、比較的身近なトラブルでもあります。
ほかにも水道設備の不具合が考えられる場合は、個人では修理をすることが難しいケースがほとんどですので、水回り修理専門の業者に修理調査を依頼するようにしましょう。
封水切れを予防するには定期的に封水を補充すること
封水切れの最も効果的な予防方法は、定期的に水を流し出して封水を補充することです。
日頃からこまめに使い続けている場合は、封水切れは起こりにくいとされていますが、勢いよく水を流し続けたりすると一時的に封水切れを起こすこともあります
そのようなときは、ゆっくり水を注ぎ入れるようなイメージで、封水を補充するようにしましょう。
家庭の中の全ての水回りを日々意図的に使うことも大切です。
普段あまり使わない場所も、週に何度か水を流すようにすれば、ある程度封水切れを予防することができます。
封水防止剤を使うのもおすすめ
封水防止剤は、排水トラップ内の封水の蒸発を防ぐ役割をもつものです。
これらはホームセンターやネット通販などで手軽に購入することができます。
商品にもよりますが、約3ヶ月から6ヶ月ほど効果を発揮するため、長期間家を空ける場合にはおすすめしたい方法の一つです。
色々と対策しても臭いが発生する場合は水道業者に相談しよう!
ここまで、排水トラップの封水切れを防ぐ方法を紹介してきました。
水回りのトラブルは放っておくと、臭いが壁紙に染み付いてしまうなどの二次的な被害も発生することもありますので、適切な対処をする必要があります。
これらの対策をしても臭いが解消されない場合は水道業者に相談するようにしましょう。
水回りのプロであれば、様々な対策を施してくれることでしょう。