最終更新日 2021年11月26日

給湯器から突然お湯が出なくなったら慌ててしまいますよね。

特に水道の水温が低い冬は、冷たい水からお湯を沸かすため、給湯器の負担が大きくなり、給湯器の故障が多くなります。

また、給湯器の使用率が高くなり、給湯器がフル稼働しますので、寿命がきていた給湯器が急に壊れてしまうといったこともあります。

他に、雨の多い梅雨どきや秋も、給湯器の故障が増えやすい時期です。

では、給湯器の寿命とはどれくらいで、どんな症状が出たら交換時期のサインなのでしょうか。

今回は、給湯器の寿命がどれくらいかということと、交換時期のサイン、給湯器を長持ちさせる方法について、お伝えしていきます。

給湯器の寿命はどれくらい?

ガス給湯器は、修理不能で直らない状態になって初めて「寿命」を迎えます。

ガス給湯器の「寿命」は、設置されている場所や使用環境、使用頻度、使用機種によっても故障するタイミングが異なるため、正確には、「各家庭の給湯器の寿命年数はバラバラである」が答えです。

ただし、一般的には、給湯器の寿命はおよそ10年程度と言われています。

しかし、早い場合は7~8年で寿命を迎えるケースもありますし、逆に15年以上持つ場合もあります。

では、この「10年」という数字は、どこから出てきたのでしょう。

給湯器各社の見解

まず、有名なガス給湯器メーカーの公式見解を見てみましょう。

株式会社ノーリツ標準的な使用条件のもとで使用した場合、安全上支障がなく使用することができる期間(設計上の標準使用期間) として、10年を目安としています。
リンナイ株式会社ガス給湯器にも寿命があります。ガス給湯器の点検・取替えの目安は10年です。
株式会社パロマガス給湯器は8~10年くらいが寿命といわれています。8~10年以上使用されている場合は、一度点検をおすすめいたします。

このように、各社とも「10年」という数字が明記されています。

設計標準使用期間が10年

ガス給湯器の本体に貼られているラベルや取扱説明書を見ると、「設計標準使用期間」や「設計上の標準使用期間」は「10年」と書かれている場合が多いです。

「設計標準使用期間」「設計上の標準使用期間」とは、ノーリツの見解でもあったように、「標準的な使用条件のもとで使用した場合、安全上支障がなく使用することができる期間」という意味です。

給湯器はどうしても経年劣化してしまうので、国(経済産業省)やメーカーによって、こうした期間が定められています。

設計標準使用期間の設定にあたっては、使用頻度、使用環境、設置場所などの使用条件はJIS(日本工業規格)で制定されているものを参照しているので、信用に足るものでしょう。

この期間を過ぎると、経年劣化により事故が発生する可能性が高くなるということです。

もちろん期間内であっても、使用条件がJISの規格とかけ離れているような状況であれば、当然早く寿命を迎えてしまいます。

逆に、マンションなどでは、屋根が付いているところにガス給湯器が設置されていることが多いので、実際の使用年数は長くなることが多いのです。

修理部品の供給期限が10年

もう一つの根拠は、修理部品の供給期限が10年であることです。

通常は、発売から10年で部品の製造も終了してしまうため、10年目以降は、メーカー側に修理用の部品を保有しておく義務がなくなります。

つまり、10年以上経った給湯器が故障した場合は、部品がない可能性があり、修理対応ができなかったり、修理できても部品が特注になり、時間がかかったり修理費がかさんだりする場合があるということです。

例えば、使用10年1ヶ月目で給湯器が故障して、部品の供給期限が切れていた場合、修理不能ということで、結果的に「給湯器の寿命」を迎えることになります。

7年目以降は故障が増える?

給湯器の設計標準使用期間を過ぎて、点検も受けずに使い続けると重大事故に繋がるリスクが高くなります。

事実、10年前後から事故が急増するデータも出ており、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、使用期間10年を目安に給湯機の点検を受けるよう、呼びかけをしています。

また、メーカーの無料の保証期間は1~2年ですが、有料の延長保証というのがあり、たいていの人はこれに入っているでしょう。 この延長保証の保証期間と金額を見ると、7年と10年で1.6倍~5倍もの差があるのです。

R社

7年保証10年保証
¥14,000¥23,200
¥16,000¥24,000
¥14,500¥24,000
¥16,500¥24,000

N社

7年保証10年保証
¥7,400¥26,400
¥5,000¥25,400
¥11,400¥37,400
¥9,000¥34,400

保証料が高くなるということは、7年~10年の間に故障する件数が多くなっているということです。

これを見ると、7年目以降は故障が増える、ということが如実にわかりますね。

給湯器の寿命・交換時期を示すサイン

では、給湯器の寿命・交換時期を示すサインはどんなものがあるでしょうか。

以下に挙げる13例のようなサインが現れたら、寿命が近いと思っていいでしょう。

使用すると給湯器から異音がする

もともと給湯器はお湯を沸かすときに音の出る機器ですが、お湯を沸かしている時の音が大きくなったり、今までと明らかに違う音や小さく爆発するような音がしたり、お湯を出す際に「ボンッ」と大きな着火音がするなどの場合は、給湯器部品の劣化が原因で不完全燃焼を起こしているケースがあります。

温度がうまく調整できない

蛇口やシャワーなどから出るお湯の温度が、上がったり下がったりと安定せず、設定温度と一致しない、またはお湯の温度が調整できないといった場合には、給湯器の中の温度を検知する部分が劣化してきている可能性が高いです。

蛇口やシャワーからのお湯が出なくなったり、お湯がぬるくなったりする

蛇口やシャワーから突然お湯が出なくなる、または出てもぬるいお湯しか出ないなどの場合も故障の可能性があります。

お風呂のお湯がぬるい

オート・フルオートタイプの給湯器で、お湯張りはできるが設定温度よりぬるいという場合も寿命が近い証拠です。

蛇口やシャワーからはお湯が出るが、お湯張りができない。

リモコンの故障の可能性もありますが、給湯器内部の故障の可能性もあります。

ふろ給湯器の追い焚き機能が使えない

追い焚きができない原因の多くは、浴槽内の水位不足による操作ミスや掃除不足などです。

しかし、その他にも、追い焚きに関係する給湯器部品の経年劣化による故障が発生していることがあります。

内部の基盤などが故障の原因の場合には、修理費用も高額になります。

シャワーから出る湯量が明らかに少なくなった

シャワーから出る湯量は、季節によって変動はありますが、同じ温度で明らかに以前より少なくなったという場合には、故障が疑われます。

エラーコードが頻繁に出る

エラーコードが表示された場合は、ひとまずリセット操作などで解決できることがあります。

しかし、潜在的な原因が取り除かれていない場合は、再びエラーコードが表示され給湯器の運転が停止します。

このように何度もエラーコードが表示される場合は、給湯器内部部品の経年劣化による故障の可能性が極めて高いと言えます。

ガスなどのいやな臭いがする

給湯器からガスのにおいや焦げ臭い異臭を感じた場合は、給湯器内部部品の経年劣化が原因で不完全燃焼が発生し、一酸化炭素中毒や爆発的な火災を引き起こしかねない非常に危険な状態である場合があります。

或いは配管が劣化してガス漏れを起こしていることも考えられます。

この場合も引火すると危険なので、すぐに専門業者に点検をお願いしましょう。

給湯器本体から水漏れしている

給湯器内部の配管のゴム製品などは、経年劣化により故障しやすい部品の1つです。

こういったゴムパッキンが割れてしまったりすると、水漏れの原因になりますが、経年が浅い場合は、これを交換するだけで済みます。

しかし、給湯器の底から水が流れ出ていて、目視で確認できる場合は、大雨などで水が入り込む以外に、給湯器内部の水径路(熱交換器の破損など)の部品の経年劣化による水漏れの可能性があります。

水漏れは不完全燃焼や火災を引き起こすリスクが高いため、大変危険な状態であるといえます。

こちらの場合も、すぐに専門業者に点検を依頼しましょう。

排気口周辺や前板が錆びている

排気口周辺や前板が錆びている場合は、給湯器内部からの水漏れによる腐食が一つの原因として挙げられます。

錆が確認できるからといって、その時点で寿命が近いとは判断しにくいケースもありますが、錆が給湯器下部の広範囲に渡って確認することができ、また穴あきが目視で分かるような状況の場合は、給湯器内部の部品の経年劣化による水漏れを疑ってみる必要があるでしょう。

排気口周辺が黒く汚れている

排気口周辺が黒く汚れている場合は、給湯器内部の部品の経年劣化が原因で不完全燃焼を起こし、黒いすすが排気口周辺に付着している可能性が考えられます。

すすが確認できる場合は、不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険性が高まるため、明らかな寿命であると捉えて、給湯器の使用を即中止しましょう。

給湯器から黒い煙が出ている

給湯器内部の経年劣化によって不完全燃焼を起こしており、一酸化炭素中毒を引き起こす可能性が非常に高い危険な状態で、完全な故障です。

即使用を中止して、専門業者に連絡しましょう。

給湯器を長持ちさせる方法

では、給湯器を寿命まで、或いは寿命以上に長持ちさせる方法はないものでしょうか。

以下では、給湯器を長持ちさせるコツを7つ挙げて解説していきます。

給湯器を長持ちさせるコツ1(使用時間)

給湯器の設計標準使用期間である10年とは、時間に直すと3,650時間の燃焼までになります。

算定根拠の使用条件は、家族構成4人世帯、春秋の気温20℃ 湿度65%、給水温度15℃ 出湯温度40℃、1日使用量456リットル1日使用時間1時間、1年使用日数365日です。

このため、お湯を出しっぱなしにしたり、使用時間が長くなったりすると、燃焼時間も増えてしまい、それだけ寿命も縮まります。

お湯は必要な時に必要なだけ使用することで、燃焼時間も抑えられ、給湯器を長持ちさせることができます。

給湯器を長持ちさせるコツ2(凍結防止)

よくある故障として、給湯器内部の熱交換器の破裂による水漏れがあります。

冬場において長い期間給湯器を使わない場合、電源を抜いてしまうと給湯機内部の凍結防止ヒーターが作動しないため、給湯器の中にたまった水が凍ってしまい膨張して破裂の原因となります。

そのため、特に冬期は給湯器の電源を抜かないように注意しましょう。

長い期間使用しない場合で、電源を抜いたり、ブレーカーを落としたりする場合は、給湯器の水抜き栓を開いて、給湯器内部の水を抜くようにします。

また、冬期において配管が凍結してしまうことがある地域においては、就寝前にお湯の蛇口から、少量の水を出し続けるようにすることが必要です。

給湯器のリモコンの電源を切って、割り箸一本分の太さ程度の水を出し続けることにより、水を動かし凍結を予防します。

追い焚き機能付きの給湯器を使用している場合は、浴増のお湯を排水せずに、残り湯が循環金具より 5cm 以上上にある状態にしておきましょう。

そうすると機器が外気温を感知し、自動的にポンプ運転を行い、凍結を防ぎます。

給湯器を長持ちさせるコツ3(給湯器の周囲の環境)

屋外設置型給湯器の排気口の前に物置などを置いているのをたまに見かけますが、排気口の近くに障害物があると、排出された排気が給湯器の給気口から入り、ショートサーキットを起こして不完全燃焼を起こし、故障の原因になります。

給湯器の給気と排気は給湯器を燃焼させるためにとても重要な役割があるので、給気口をふさいだり、排気口近くに障害物を置いたりするのはやめましょう。

また、給湯器の周囲に雑草などが生えていると、給湯器の中にクモの巣が張られたり、虫などが混入したりして故障の原因になることがあるので、給湯器の周囲はキレイに掃除しておきましょう。

給湯器を長持ちさせるコツ4(入浴剤の使用)

入浴剤のなかにはイオウ、酸、塩分を含むものがあります。

入浴剤を浴槽にいれ、そのお湯を追い焚きすると、入浴剤の成分を含んだお湯が配管を通ることになります。

すると配管は金属でできているため、イオウや酸に反応し、劣化してしまうのです。

また、白く濁るタイプの入浴剤などを入れて追い焚きすると、配管に成分が残ってしまうこともあります。

配管に成分が沈殿すると追い焚きの熱交換器内で局部沸騰を起こし、異音が発生します。

こういった症状が起きると、熱交換器を交換せざるを得なくなり、寿命が著しく短くなってしまうということです。

イオウを含むものはなるべく使用しない、炭酸入浴剤の場合、追い焚きは発泡がやんでからにする、バスソルトなど塩分の強いもの、乳白色(白濁)のものを使うときは追い焚きをせず、使用後はすぐに排水することなどが重要です。

給湯器を長持ちさせるコツ5(リモコンの掃除)

リモコンの掃除はこまめにすることが大切ですが、塩素系・酸性・アルカリ性の洗剤や、ベンジン・シンナーなどの有機溶剤、メラミンスポンジは使用しないようにしましょう。

変色・変形・傷・割れなどの原因になります。

リモコンの表面が汚れたときは、湿った布で軽く拭く程度にするといいでしょう。

給湯器を長持ちさせるコツ6(給湯器の使用に関して)

リモコンの運転スイッチが「切」の状態で給湯栓を開けて水を出したり、シャワーを浴びたりしないようにしましょう。

給湯器内部の通水部分の結露により、機器の寿命が短くなります。

サーモスタット式混合水栓で運転が「切」の状態で水を使用するのは、給湯器内部の通水部分の結露の原因になるので、必ずハンドルの設定を「水」の位置にして使用します。

また、浴槽の循環金具(循環口)をタオルなどでふさぐと循環不良となり、お風呂沸かしが出来なくなるので注意しましょう。

給湯器を長持ちさせるコツ7(本体などの掃除)

ふろ自動湯張り・追い焚き機能がある場合は、循環アダプターや追い焚き配管の掃除は必須です。

掃除を怠れば、湯垢などが詰まったり、弁が固着したり、ポンプの負荷が増えたりするリスクが高まり、結果的に部品寿命を短くしてしまいます。

浴槽のお湯と水の出入り口である循環アダプターには、配管にゴミや髪の毛が入り込まないようにフィルターが設置されています。

このフィルターは目が非常に細かく、定期的に掃除していないと詰まってしまうものです。

フィルターが詰まると、追い焚きをする際、お湯と水の循環不良を起こすようになり、温度センサーが温度を誤検知し、追い焚きをストップさせてしまいます。

この現象をショートサーキットと呼び、ショートサーキットを起こすと、追い焚きができないだけではなく、給湯器に無駄な負担をかけ、寿命を縮めてしまいます。

したがって、一週間に一度くらいの掃除が重要です。

追い炊き配管は、1~2ヶ月に一度のお手入れで大丈夫でしょう。

また、給気口や排気口などに汚れや埃などが蓄積すると、排気不良などの原因になり、結果的に給湯器の寿命が短くなる可能性が出てくるので、こちらも定期的に掃除しましょう。

給湯器の掃除をすることで、異音や錆、劣化などの異変にも気づきやすくなります。

給湯器を10年以上長く使うことについて

給湯器の買い替えの目安は10年程度と言ってきましたが、実際には10~15年使われることも少なくありません。

特にマンションなどでは、設置場所の関係で雨風の影響が少なく、さらには給湯器の存在感が薄いこともあり、15年以上経ってから買い替えるケースも多いようです。

しかし、戸建てでもマンションでも、点検を受けずに10年以上使うことはリスクが大きいと認識する必要があります。

長く使うメリット

給湯器を長く使うメリットはただ一つです。

それは、長く使う分だけ給湯器の購入費用が節約になるということです。

長く使うデメリット

一方、長く使うデメリットはたくさんあります。

  • 10年以降は定期的な点検費用がかかる
  • 費用節約で点検を受けなければ、事故のリスクが高くなる
  • 部品の経年劣化で燃費(燃焼効率)が悪くなり、ガス代が高くなる
  • ある日突然、お湯が出ない日がくる可能性が高くなる
  • 急に壊れて焦って交換検討した結果、業者に足元を見られて高い見積りになる可能性が非常に高くなる

節約のために長く使っても、結果的には損する事例も少なくないということです。

寿命を超えて長く使い続けると…

長期間機器を使用することで経年劣化が進み、重大な事故につながるおそれがあります。

重大な事故とは、火災、火傷、異常着火(爆発)、一酸化炭素中毒(不完全燃焼による)などです。

2012年から2016年の5年間に、10年以上使用したふろ釜や給湯機器が発火するなどの事故が435件発生しています。(独立行政法人 製品評価技術基盤機構NITE調べ)

したがって、点検も受けず、メンテナンスもせずに長期間使い続けることは、非常にリスクが高いといえます。

安心・安全のために点検を受ける

給湯器は、10年程度使い続けるとメーカーによる法定点検を受けることが義務付けられています。

点検時期の6か月前には、給湯器の所有者の元に通知が届きますので、日時を決めて点検を受けるようにしましょう。(点検費用は有料です)

また、法定点検以外の時期でも、ガス業者に依頼すれば点検してくれます。

給湯器の内部は専門の資格を持った業者でないと勝手に触れないので、最近給湯器の調子が悪いと感じた場合には、一度診てもらった方が良いでしょう。

ガス給湯器の寿命を長くする秘訣はこまめな掃除と定期的な点検!

以上、給湯器の寿命と交換のサイン、長持ちさせるコツと長期間使用するリスクをお伝えしてきました。

耐用年数の10年を超えて使用するにはリスクがありますが、こまめに掃除したり、定期的な点検を受けたりすることで、安全に使い続けることができるでしょう。

まずは自宅の給湯器がどこにあるのかを知り、点検の日時を確認し、掃除をするところから始めましょう。